00:08 新刊出版
こんにちは、高宮利行です。
久しぶりにこのYouTubeにご紹介したい本が1冊ございます。
今日はたまたま2月23日、天皇誕生日であります。天皇陛下おめでとうございます。実はこの日、私も79歳の誕生日を迎えました。何の関係もありませんが、いろいろメールでメッセージをいただいております。ありがとうございます。
で、ちょうどですね2、3日前に岩波新書から『西洋書物史への扉』という私が書きまして、出版した本が世に出ました。もう店頭に並べられていると思いますが、どうぞご覧いただきたいと思います。
00:57 出版までの道のり
で、この本は実は企画自体は、かなり前からはっきり申し上げると、20年以上前から出ていたものであります。岩波書店で『グーテンベルクの謎』という本を出しました。
で、その後の企画として出てきたのが、西洋の書物史、これの一般入門書を書いてもらえないかというリクエストでありました。
すぐOKいたしまして、ただちに一章、二章書いたんですけれども、実は私の悪い癖で、それを忘れて、どこかのファイルに入れたまま年月が経ちました。
その間に何冊か自分の本を出しているんですが、思い出したようにこの古い原稿を持ち出しまして、もう代替わりしている編集部の方にお送りした。そこからまた再び火がつきまして、1冊の本にしようということで、その後は編集者の方が、積極的にですね、私のおしりを叩いてくださいましたので、何とか今日の出版にこぎつけたというわけであります。
2:09 文字メディア、いにしえの形態
目次を見ますと、「文字メディア、いにしえの形態」一番古い、2000年近く前の文書板というのは、どういう形をしていたのか。特にローマ軍が進駐していたイギリス北部のヴィンドランダあたりで、たくさん出土されたもの。その辺りから紹介しております。
2:33 写本以前 2:38 Bookの語源をたどる
そして、写本以前の形態、第3章が「Bookの語源をたどる」という、そういう段々エピソードが増えていくわけですが、日本語の漢字「木」という字に下に傷をつけますと、「本」となります。
それと同じように、西洋でもこのBookという単語の語源、これを調べますと、樹皮ですね。木の皮の内側それに何か尖ったもので、字を書いてメッセージを残す、と。これがどうも西洋におけるBookの起源と思われますが、これがどういうふうにして変化していったか。
3:18 冊子体の登場、3:33 中世的知的生産の技術
それから今度は冊子体の登場です。それまでは1枚物だったものが冊子体となる。で、当然羊皮紙とパピルスという、この対比も重要になります。
それから少し進んで、12〜13世紀からヨーロッパで見られた中世的な知的生産の技術として、ペチア・システムというのがあった、この事実を紹介しております。
ペチアというのはpieceなんですが、大学町の書籍商が持っている分冊化された写本のテクスト、それを1冊ずつ借りていって、もちろん料金体系が決まっておりますが、それを写して戻すと、もう一回新しいものを借りることができる。例えば、1週間で 1 fasciqule(分冊)ですね、分冊をコピーできれば20週で20分冊。で、それが1冊の本になるという、そういうペチア・システムというものがありました。それを詳しく例を挙げてご説明しております。
4:33 音読、朗読、そして黙読 4:44 写字生の仕事場
それから当然、書物史の中での問題点の一つが「音読、朗読、そして黙読」というテーマがあります。で、その後「写字生の仕事場」がどうであったか。ジャン・ミエロという有名な写字生の仕事の現場、この絵を分析したりしております。
このあたりからはですね、次第にあれ、どこかで読んだことがあるな、と思われる内容のものが出てきます。この本書の一部は、もう既に雑誌などで発表したもので、これに挿絵とそれから解説を加えてより、きちんとしたものにしております。
5:15 回転式書架のイコノグラフィ 5:20 古典の再発見とルネサンスの矛盾
「回転式書架のイコノグラフィ」というタイトルを付けた章。
それから「古典の再発見とルネサンスの矛盾」。ポッジョ・ブラッチョリーニといったような有名な写字生であり、物を書いた人物、こういうものも紹介しております。
5:37 中世趣味 5:41 ヨーロッパ世紀末の写本偽作者
それから、だいぶ時代が下って「中世趣味」、それからヨーロッパの世紀末に登場した写本の偽物を作る偽作者、これも紹介しております。
5:52 愛書狂時代のファクシミリスト 6:07 大きな本、小さな本
それから愛書狂時代には、欠葉を補うためにファクシミリストというのが登場しております。この仕事をしたジョン・ハリスを紹介し彼のミスも指摘しております。
それから、「大きな本と小さな本」私が手に持つのがやっとだった非常に重たい22キロというヴァーノン写本、あるいはグーテンベルクの42行聖書。
それから一方で、ミニチュアブックと呼ばれる小さな本。アーサー・ホートンというアメリカに最大のコレクターがおりました。
6:32 物言わぬ余白の力 6:48 第二グーテンベルク革命
それから、今度は「物言わぬ余白の力」。本の紙の印刷された部分、それを守る為にあるはずの余白というのが存外、力を持っているという話。
で、最後が、第二グーテンベルク革命という、今行なわれているデジタル化の問題を取り上げております。
6:57 蔵書票が語る本の歴史 7:04 口絵と図版
で、最後にコラムというものを一つ付けまして「蔵書票が語る本の歴史」。
これは全体的にはカラーページを4ページ、グーテンベルクの聖書、これは慶応本の第一ページですね。
それから私の元にあります、19世紀末に作られた非常にきらびやかな写本の偽物、それからレリーヴォ製本という、19世紀半ばに一部流行った製本で作られた本。それから、ケルムスコット・プレス、こういうものも紹介し、最後のページでは、『詩篇』の小さな豆本ですが、刺繍されたもの。それから羊皮紙の断片、こういうものもカラーで紹介しております。
後は、各チャプターの中に数ページに一度は、必ずかなり重要な写本や資料の写真を入れて、全体として西洋書物史への入門、扉という名前を付けましたが、これを岩波新書の赤いラベルのシリーズで出版して、今店頭に並んでいると思いますが、どうぞ直接手に取ってご覧いただきたいと思います。どうもありがとうございました。
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